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 恋了へて冷えゆくいのちうつし世の延滞料はまだ足りぬとや
                       (題詠2014:12 延)

            IMG_5490.jpg

週末ごとに雪や残雪や雨やでちっとも山が歩けない。部屋で本ばかり相手にしているとどこか弱ってきて、読みながら泣いてしまうというていたらく。余り泣くような本ではないはず…

 「八犬伝」上下 山田風太郎

NHKの新八犬伝が73年から75年、ジュサブローの人形が妖しく艶かしいと評判だったけどあたしがお子さま向けの時間に家にいる訳もなく未見で、だいたいの粗筋は小さな頃の本や父のおハナシ、覚えているのか後の記憶が判らない映画で知るのみで八犬士の名も持ってる玉の文字も全ては言えず、たぶん人形劇と講談で覚えた夫に威張られたことがあるのだった。
馬琴が半生を費やした大部の、風太郎によるリライトの「虚」と書いている馬琴を描く「実」が入り交じり、南総八犬伝の部分もふむそうだったのかと何度も膝を叩くのだが、面白いのは風太郎の作り出す「実」の部分で、特に馬琴・北斎・南北が顔を合わす芝居小屋の奈落(しかも四谷怪談初日かつ鼠小僧まで顔を出すしつらえ)などもうわくわくしてしまう。上下二冊、あっという間に夜を徹することになる。

で、思わず泣いてしまったのはその最終章、「虚実冥合」。
四谷信濃坂でつましい生活を送っている馬琴は両眼を失明する。もう物語の続きを諦めざるをえない舅に、嫁のお路が志願して口述筆記で八犬伝の長い物語を完結させることになる章。片や馬琴は物語の流れの面白さを壊してまでも、己の全知識で故事諺を使って微細に蘊蓄や説教を縷々と書き込むひと。対するお路は全く漢字を知らぬ。それまで物語はもとより読み書きそのもの縁はなく、馬琴の病弱だった長男が亡くなった後も地味な暮らしの婚家に仕えてきた女性。
そのふたりが「那時遅し這時速し、渦く潮水に波瀾逆立て、百千万の白小玉、忽焉として立升る。白気と倶に中空に、冲りて宛衆星の、烏夜に晃くに異ならず、又其許多の白小玉、亦只数万の金蓮金華と変じて赫突。」なんてえ文章を一文字一文字、口で説明しながら綴っていく。盲目のひとは形を示せず、「りっしんべん」だの「赤がふたつ」だの「那智の那」だの説明しても聞く方が判らない。
もう本筋の安房の聖戦なんてどうでも良くなりません?どうせ馬琴の「虚」は勧善懲悪の大団円を迎えるんですもの。

「縫刺の技、薪炊の事などこそかれが職分なれ、文墨風流の事に代らせて、困じながらも倦でよく勉にあらざれば、這十巻を綴り果して、局を結ぶに至らんや。」
「噫(くちへんに喜)、廬生の栄華は五十年、本(伝の旧字)作者の筆労は正に是二十八年、就か夢にあらざりける」
長い後書を書きながら(もちろん記すのはお路)馬琴は、お路は嗚咽する。読んでるあたしも貰い泣く。

風太郎が上手いのは馬琴に対してほとんど対極の生き方をした北斎を持ってくることで、この最終章にも嫁舅の口述場面をかいま見る北斎がいる。このひとも晩年までを娘お栄と送っている。
こちらは北斎と同じく絵を描いた。葛飾応為、その美人画は父も敵わなかったのだとか。

(写真は昨日開いた初クロッカス)
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